#雑記 #神話伝承系
なんとなく寝る前にイメージつかみなおしも兼ねて創元社の「ケルト神話・伝説」を読み直しているのですけども、伝承上のクーフーリンの特徴的なところは紙一重というかやはりその尋常でない獰猛さにある気がするので、時々オルタニキの方がキャスニキより近いのではという気持ちになったりします( Táin Bó Cúailngeはこの本かなりわかりやすく描いてくれてるのでイメージしやすい)
一行で百人くらい、あっさりと、さっくり殺す。しかも、無造作に、興味なさげに。それが何度も何度も出てくるという。その戦い方はもう戦いというより次元が違う凄まじさ。
通常時は非常に美しい姿をしているのだけれども、戦の際にríastrad、つまり「ねじれの発作」を起こしたときはどうひいき目に見ても化け物の姿になるし、その生死の感覚もどこか通常の人間は突き抜けていて、古い神のような価値観であるところ。
生死に関する感覚が、同時代のフェルグスやコナルに比べても著しくぶっ飛んでいる。
その感覚は人間というより、アポロン神のような、古い神の感覚にどこかしら似ていると思うのです。たぶん視座が元からやはり人間とは違う。
人間と神のはざまにあり、また美しいものと化け物のどちらもの姿を持つその二面性、どちらが本当とかではなくどちらも1セットで本性なんだろうなあと。
以前からその姿も描いてみたいなーとは思ってるんですけど、六章では出るかなあ。
他の古代の神話と比べても、クーフーリンくらい普段の姿が美しいけども、戦闘時最高に怒りが高まるとあそこまでの化け物になるという描写が強調されているのはあんまり見たことがないと思います。そこまで人外な描写って必要…??みたいに思うくらいものすごい強調された人外描写があるわけですが、あれって古代に何かほかのモチーフがあったりしたのかなあ…?それくらいに、かなり独特な変身の姿の、子細な描写。
キャスニキを描くときは、神話の、特に美しいと描写された部分を意識して描くようにしてるんですけども、クーフーリンであるならあの変身するんだよなあ。というかクーフーリンズは全員同座のものであるなら本質的には全員あの姿になれるんですよね。改めて考えると色々とすごい(現代のお話でも変身ものって人気ですけど紀元前から人間の好む物語の形が変わってないのは、それはそれで信頼感があります)
なんとなく、常の姿からあの姿になるというと、現代感覚だとコンプレックスみたいなものも引き起こしそうなものですけどクーフーリンの場合それ全然ないんですよね。あの変化を普通に受け入れてる社会のせいかもしれないですけど。そのあたりいつもとても興味深いなあと思ったりします。どういう精神構造なんだろう、とか。コンプレックスどころかいつも自信満々ですし。なんというか、つくづく強い。
オルタニキ幕間で槍クーが自らのその姿を史上最高にロクでもない代物、みたいな表現をしていたので一応本人的にもそういう意識自体はあるようなので、表には出さないけれど、思うところは色々とあるのかもしれない、なんてあれこれ考えるのは面白いです。
他人と自分が違うのはもう生まれてしまったことだから考えない。
人間とは、普通とは違うけれどどうやって、それを生かしていくか。
ついに六月が来ますね。こわい、楽しみ、なんだか色々なきぶん。
畳む
なんとなく寝る前にイメージつかみなおしも兼ねて創元社の「ケルト神話・伝説」を読み直しているのですけども、伝承上のクーフーリンの特徴的なところは紙一重というかやはりその尋常でない獰猛さにある気がするので、時々オルタニキの方がキャスニキより近いのではという気持ちになったりします( Táin Bó Cúailngeはこの本かなりわかりやすく描いてくれてるのでイメージしやすい)
一行で百人くらい、あっさりと、さっくり殺す。しかも、無造作に、興味なさげに。それが何度も何度も出てくるという。その戦い方はもう戦いというより次元が違う凄まじさ。
通常時は非常に美しい姿をしているのだけれども、戦の際にríastrad、つまり「ねじれの発作」を起こしたときはどうひいき目に見ても化け物の姿になるし、その生死の感覚もどこか通常の人間は突き抜けていて、古い神のような価値観であるところ。
生死に関する感覚が、同時代のフェルグスやコナルに比べても著しくぶっ飛んでいる。
その感覚は人間というより、アポロン神のような、古い神の感覚にどこかしら似ていると思うのです。たぶん視座が元からやはり人間とは違う。
人間と神のはざまにあり、また美しいものと化け物のどちらもの姿を持つその二面性、どちらが本当とかではなくどちらも1セットで本性なんだろうなあと。
以前からその姿も描いてみたいなーとは思ってるんですけど、六章では出るかなあ。
他の古代の神話と比べても、クーフーリンくらい普段の姿が美しいけども、戦闘時最高に怒りが高まるとあそこまでの化け物になるという描写が強調されているのはあんまり見たことがないと思います。そこまで人外な描写って必要…??みたいに思うくらいものすごい強調された人外描写があるわけですが、あれって古代に何かほかのモチーフがあったりしたのかなあ…?それくらいに、かなり独特な変身の姿の、子細な描写。
キャスニキを描くときは、神話の、特に美しいと描写された部分を意識して描くようにしてるんですけども、クーフーリンであるならあの変身するんだよなあ。というかクーフーリンズは全員同座のものであるなら本質的には全員あの姿になれるんですよね。改めて考えると色々とすごい(現代のお話でも変身ものって人気ですけど紀元前から人間の好む物語の形が変わってないのは、それはそれで信頼感があります)
なんとなく、常の姿からあの姿になるというと、現代感覚だとコンプレックスみたいなものも引き起こしそうなものですけどクーフーリンの場合それ全然ないんですよね。あの変化を普通に受け入れてる社会のせいかもしれないですけど。そのあたりいつもとても興味深いなあと思ったりします。どういう精神構造なんだろう、とか。コンプレックスどころかいつも自信満々ですし。なんというか、つくづく強い。
オルタニキ幕間で槍クーが自らのその姿を史上最高にロクでもない代物、みたいな表現をしていたので一応本人的にもそういう意識自体はあるようなので、表には出さないけれど、思うところは色々とあるのかもしれない、なんてあれこれ考えるのは面白いです。
他人と自分が違うのはもう生まれてしまったことだから考えない。
人間とは、普通とは違うけれどどうやって、それを生かしていくか。
ついに六月が来ますね。こわい、楽しみ、なんだか色々なきぶん。
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#雑記 #神話伝承系
ブリテン島付近のケルト関連の本で写真いっぱいなちょっと面白い古い本を手に入れたのでじわじわ読んでいたり。ケルトの建築、やはりなんとなく竪穴住居感あるような。
ピクト人の刺青とか今残ってるの?なんて思って読んでみたら参考に載っていたのは古代スキタイの見事な刺青を持つ戦士の図柄でした。これは今でもweb探せば綺麗な実物の写真出てくるのでなんだか感動します(古代とはいえ遺体であるので苦手な方にはおすすめできませんが)生前はさぞ綺麗に見えたんだろうなあ。石碑にあんなに見事な図柄を残したピクト人の刺青の図柄が知りたかったものです。古代って刺青文化はエジプトもだし、東南アジアもだし、各地にあったんですよね。興味深い。
しかし、古代に刺青入れる方法が、細い傷を作って木炭を何度も何度も擦り込む、とか書いてあって…すごく勇敢で我慢強い人じゃないと無理そうです…すごいなあ…
畳む
個人的にこの本、ハドリアヌスの長城に彫られているという異教の神のレリーフがたくさん載っていて良かったです。あの長城にこんなにレリーフがあるとは知らなかった。
ブリテン島付近のケルト関連の本で写真いっぱいなちょっと面白い古い本を手に入れたのでじわじわ読んでいたり。ケルトの建築、やはりなんとなく竪穴住居感あるような。
ピクト人の刺青とか今残ってるの?なんて思って読んでみたら参考に載っていたのは古代スキタイの見事な刺青を持つ戦士の図柄でした。これは今でもweb探せば綺麗な実物の写真出てくるのでなんだか感動します(古代とはいえ遺体であるので苦手な方にはおすすめできませんが)生前はさぞ綺麗に見えたんだろうなあ。石碑にあんなに見事な図柄を残したピクト人の刺青の図柄が知りたかったものです。古代って刺青文化はエジプトもだし、東南アジアもだし、各地にあったんですよね。興味深い。
しかし、古代に刺青入れる方法が、細い傷を作って木炭を何度も何度も擦り込む、とか書いてあって…すごく勇敢で我慢強い人じゃないと無理そうです…すごいなあ…
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個人的にこの本、ハドリアヌスの長城に彫られているという異教の神のレリーフがたくさん載っていて良かったです。あの長城にこんなにレリーフがあるとは知らなかった。
(↑に動画が読み込まれます)
このシリーズ、全体的にとても勉強になっておすすめなんですけども、これはとても興味深かったエリュシオン回。
なかでも衝撃を受けたのが、エリュシオンの名前の由来。そうだったんですね…!「古代ギリシャでは雷に打たれるのは祝福ととらえられた」というの、現代感覚だと全然思いつかなかったのですごくなんというか目からウロコというか。
前もここでちょっと呟いていた通り、オークの樹も落雷がよくあって古代ギリシャでゼウスの神樹とされてましたけども、それもたぶん古代ギリシャ人的には祝福にみえていたんだなー!となんだか納得などしたのでした。地域関わらず古代の事が色々わかるのは、本当に面白いです。有難い事です。畳む
#雑記 #神話伝承系
#植物 #雑記 #神話伝承系
2019に採取したオーク(ヨーロッパナラ)のどんぐりを同年から育てています。今年もそろそろ無事に新芽が開きそうでなにより。
育ててみると、最初の発芽もそうだったんですけど、
オークの木はどうも日本の広葉樹よりも活動が始まるのが遅くて
コナラやクヌギの葉が開き切ってからようやく葉をのそのそ開き始めるのんびり屋さん。
その分冬も結構長く葉を落とさないでいる感じがしますが、これは欧州の気候のせいかもなあと思ったり。
寒くなっても葉を長く落とさず枯葉のまま枝に保っているので、
防風林としても利用されてきた歴史があるようです。
水を好み、育ててみても一年目にしてすでに直根がまっすぐ下にながーく伸びているので、
水脈の上によく生えている樹だというのもうなづけます。
成長が遅いぶん大変長寿な樹で大きくなり、水脈の上に並ぶことが多かったので、
昔から落雷が多かったらしく、古代の神話では雷に関連した樹として記載されることが多いのも納得です。
雷の神様の樹、と言われる由来かと。
ギリシャ神話のゼウス、ローマ神話のジュピター、スラブ神話のペルン、北欧神話のトール、
そしてドルイドの最高の聖樹、ダグザの神木、シンボルとして記されているのが有名。
古くから色々な装飾やまじないのモチーフにもされていて
どんぐりは勿論、アレクサンドロス大王の息子、アレキサンダー4世のお墓からは
オークの樹の葉をモチーフにした見事な金の冠 が発掘されていたりします。
またオークのどんぐりは貴重な救荒食物でしたから、
神様の樹、賢者の樹、守らないとならない樹として昔の人たちが大切にしていたのが伺えます。
成長が早くはない樹ですし、信仰によって民間からの伐採を免れていた面もあるんじゃないかな。
実際育ててみないとわからないことって多いです。
その他こぼれ話
しかし、実際にこの樹は背が高くなる関係で落雷が多かったはずなんですが
ローマ神話では雷神ジュピターの加護のあるこの樹には雷は落ちない、
と言われていてこの樹のどんぐりは雷避けのお守りにされていたそう。
現在ブラインドの先につける玉はもとはおまじないでつけるオークのどんぐりが由来だったそうです。
でも、どの神話でも雷を司る神様に結び付けられるくらい落雷は多かったと思うのですよね。
実際はどうだったんでしょう。どんぐり自体はこの雷避け以外だと
繁栄のモチーフとして長くアクセサリーなどに使われるモチーフでもあります。
その他、オークの話だとパッと思いつくのは
FGOでもおなじみな魔術師マーリンが植えたといわれる「マーリンズオーク」なんかも有名なオークの木です。
南ウェールズのカーマーゼンはマーリンが生まれた土地(近くにある洞窟、マーリンの丘がそれ)と言われています。
ここに、街を守るようにとまじないを込めて若きマーリンがオークの樹を植えた、という伝説があります。
(実際の樹の残骸から計測すると、実際は1660年くらいに植えられたもののようですが)
もしくは、街の人がオークの樹をむやみに伐採していたので、
怒ったマーリンがオークの樹を守るためにこういったと伝わっています。
「マーリンのオークが倒れる時、街が落ちる」、
つまり「このオークの樹が倒れる時、街に災害が訪れる」。
こうした言い伝えが、カーマーゼンではずっと言い伝えられてきたのでした。
そして事実その通りであったのか、
枯れたこの樹の最後の切り株が取り払われた1978年(割と最近ですね!)に、
街はこの街史上最悪の洪水に見舞われました。
魔術師マーリンはドルイドの性格が強いとみなされる向きもあるようですから
(魔術師マーリンの元となったといわれる予言者であり狂人でもあったという
6世紀のマルジン・ウィスルトが森に隠棲したバードでした)、
オークとの結びつきも強かったのかもですね。
今は伝説を畏れた町の人により、二代目のオークの樹が同じ場所に植えられているそうです。
FGOでも高難易度、クーフーリンズと組んでもらってはお世話になってますです。
六章ではアイルランドのクーフーリンズもですがウェールズ組も里帰りみたいな感じになりますがどうなるんでしょうね。
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2019に採取したオーク(ヨーロッパナラ)のどんぐりを同年から育てています。今年もそろそろ無事に新芽が開きそうでなにより。
育ててみると、最初の発芽もそうだったんですけど、
オークの木はどうも日本の広葉樹よりも活動が始まるのが遅くて
コナラやクヌギの葉が開き切ってからようやく葉をのそのそ開き始めるのんびり屋さん。
その分冬も結構長く葉を落とさないでいる感じがしますが、これは欧州の気候のせいかもなあと思ったり。
寒くなっても葉を長く落とさず枯葉のまま枝に保っているので、
防風林としても利用されてきた歴史があるようです。
水を好み、育ててみても一年目にしてすでに直根がまっすぐ下にながーく伸びているので、
水脈の上によく生えている樹だというのもうなづけます。
成長が遅いぶん大変長寿な樹で大きくなり、水脈の上に並ぶことが多かったので、
昔から落雷が多かったらしく、古代の神話では雷に関連した樹として記載されることが多いのも納得です。
雷の神様の樹、と言われる由来かと。
ギリシャ神話のゼウス、ローマ神話のジュピター、スラブ神話のペルン、北欧神話のトール、
そしてドルイドの最高の聖樹、ダグザの神木、シンボルとして記されているのが有名。
古くから色々な装飾やまじないのモチーフにもされていて
どんぐりは勿論、アレクサンドロス大王の息子、アレキサンダー4世のお墓からは
オークの樹の葉をモチーフにした見事な金の冠 が発掘されていたりします。
またオークのどんぐりは貴重な救荒食物でしたから、
神様の樹、賢者の樹、守らないとならない樹として昔の人たちが大切にしていたのが伺えます。
成長が早くはない樹ですし、信仰によって民間からの伐採を免れていた面もあるんじゃないかな。
実際育ててみないとわからないことって多いです。
その他こぼれ話
しかし、実際にこの樹は背が高くなる関係で落雷が多かったはずなんですが
ローマ神話では雷神ジュピターの加護のあるこの樹には雷は落ちない、
と言われていてこの樹のどんぐりは雷避けのお守りにされていたそう。
現在ブラインドの先につける玉はもとはおまじないでつけるオークのどんぐりが由来だったそうです。
でも、どの神話でも雷を司る神様に結び付けられるくらい落雷は多かったと思うのですよね。
実際はどうだったんでしょう。どんぐり自体はこの雷避け以外だと
繁栄のモチーフとして長くアクセサリーなどに使われるモチーフでもあります。
その他、オークの話だとパッと思いつくのは
FGOでもおなじみな魔術師マーリンが植えたといわれる「マーリンズオーク」なんかも有名なオークの木です。
南ウェールズのカーマーゼンはマーリンが生まれた土地(近くにある洞窟、マーリンの丘がそれ)と言われています。
ここに、街を守るようにとまじないを込めて若きマーリンがオークの樹を植えた、という伝説があります。
(実際の樹の残骸から計測すると、実際は1660年くらいに植えられたもののようですが)
もしくは、街の人がオークの樹をむやみに伐採していたので、
怒ったマーリンがオークの樹を守るためにこういったと伝わっています。
「マーリンのオークが倒れる時、街が落ちる」、
つまり「このオークの樹が倒れる時、街に災害が訪れる」。
こうした言い伝えが、カーマーゼンではずっと言い伝えられてきたのでした。
そして事実その通りであったのか、
枯れたこの樹の最後の切り株が取り払われた1978年(割と最近ですね!)に、
街はこの街史上最悪の洪水に見舞われました。
魔術師マーリンはドルイドの性格が強いとみなされる向きもあるようですから
(魔術師マーリンの元となったといわれる予言者であり狂人でもあったという
6世紀のマルジン・ウィスルトが森に隠棲したバードでした)、
オークとの結びつきも強かったのかもですね。
今は伝説を畏れた町の人により、二代目のオークの樹が同じ場所に植えられているそうです。
FGOでも高難易度、クーフーリンズと組んでもらってはお世話になってますです。
六章ではアイルランドのクーフーリンズもですがウェールズ組も里帰りみたいな感じになりますがどうなるんでしょうね。
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先の本で「ねじれの発作」が幼いころに戦の女神から与えられた、という記述が気になったので、ちょっと後で読みなおす「Táin Bó Cúalnge from the Book of Leinster 」
あと、何度読んでも可愛い描写があったりしてにこにこしてしまう「The Wooing of Emer by Cú Chulainn 」
戦の女神が与えたって記述あったっけな~…どうだっけ。レンスターの書の英語版
Táin はしかし、読むたびに戦の発端が本当にどうしようもないな…という気持ちになります
こんなことのためにあれだけたくさんの人が死んだのかという。
(追記:ざっとみたところレンスターの書英語版Táinには該当箇所がないようなので、別の伝承からひいてきた記述なのかな…??)
ところで久々読み返してみてやっぱりセタンタさんの
‘It is a wonderful thing if I am but one day and one night in the world provided that my fame and my deeds live after me.’
この言葉にクーフーリンという英雄のすべてがこめられているように思ったり。